年間数十体もの遺体が発見される富士の樹海。

入り組んだ森林は入り込んだ人間の感覚を麻痺させ、溶岩質の地面は足元を痛めやすくしている。

そんな場所なので迂闊に入り込むことは薦められないのだが、この樹海のどこかには、未来を知ることの出来る湖があるという。

その湖の名前は青木菟というそうで、決してそこまで大きな湖というわけでもないようだ。

現に、グーグルアースで上空から撮影された写真を見ていても、それらしいものは見つからない。

恐らく、鬱蒼とした木々に阻まれて、空撮写真では確認出来ないのだろう。

この青木菟を運よく見つけることが出来たら、その水面を静かに覗き込むといいだろう。

ここで水面に映るのは自分の顔ではない。覗き込んだ人物の未来の姿が垣間見えるという話だ。

もし、生きることに絶望してしまい、樹海で命を絶とうと考えている方がこの湖を見つけることが出来れば、思い切って水面を見つめてはどうだろうか。

そこに映る未来の様子次第では、生きることもそんなに苦しいものではないと思えてくるかも知れない。

もっとも、仮に青木菟を発見することが出来たとして、そこから無事に脱出することが出来るかどうかは分からないのだが。

また、興味本位で入ることもお薦めしない。未来を覗こうとして樹海に潜入し、そのまま迷子になってしまっては元も子もない。