1945年9月10日。アメリカ・コロラド州の農家で、一羽の雄鶏がその日の食卓に上がるため、家人によって首を切断された。

通常、切断されてから数秒は体が大きく痙攣し、暴れ回るのだが、この雄鶏はいつまで経っても動きが止まらない。家人はその首なし鶏を呆然と見つめていたそうだ。

とりあえずそのまま小屋の中に戻し、様子を見ることにした。翌日、とっくに冷たくなっているであろうと家人が小屋を覗くと、なんとあの鶏がしっかりと生きている。

しかも、とっくに頭を失っているのにしきりに餌を啄ばもうと餌箱の前で首を上下している。家人はここでこの鶏を出来るだけ生存させてみようと思うことにした。

早速餌をすり鉢で細かくし、それを水と混ぜて雛鳥に与えるための餌を作ると、それをスポイトで首なし鶏の断面に覗く食道に流し込んだのだ。

鶏はこれによって餓死を免れた。そうこうしているうちにこの鶏が話題になり、遂に家人はこの鶏で興行を打つことを思いついた。

結果的に言うとこれが大成功。全米でこの首なし鶏が大人気となったのである。

この状態で鶏はおよそ18ヶ月もの間生き続けたというから驚きだ。

しかし、興行先のホテルで餌を詰まらせてしまい、そのまま亡くなってしまったという。