アメリカ大陸では、ヨーロッパから大勢の入植者が現れたよりも以前から、インディアンたちによって奇妙な都市伝説が語り継がれている。

その中でも特に奇怪なのが、スティキンと呼ばれる正体不明の化け物に関する話だ。

スティキンとは、古くから森に住んでいるといわれる邪悪な精霊で、人間にも猿にも見える姿をしているという。

そしてスティキンの好物は人間。人間なら老若男女や人種を問わず、襲い掛かって喰らってしまうというから恐ろしい話だ。

スティキンは人間の臓物を何より好み、捕らえた人間の皮を剥いで、肉を削ぎ、中に詰まっているものを根こそぎ食べてしまう。

そしてここからがなんとも奇妙なのだが、残った人間の皮の部分は食べずに、その中に自分が入り込んでしまうというのだ。

この状態で、殺した人間の本来住んでいるコミュニティに入り込み、内部から次々に人間を喰らって行くとされている。

奇妙なのはこの際に、自分の内臓を吐き出して森に置き去りにするという点。

こうすることで、仮に自分が喰らった人間に化けていることが察知され、退治されても、本体の臓腑は無事で済ませることができるからと考えられている。

北アメリカの森林地帯では、未だに時折何者かの内臓がそっくりそのまま放置されていることがあるという。

猟師たちはこうした物体を見るや否や、すぐにオイルを浴びせて焼き払うことにしているとか。

内臓を焼かれたスティキンは死ぬといわれているが、これまで何度も同じことが繰り返されてきたにも関わらず、どうしてかスティキンがいなくなることはない。