現在、いかに広大な大海原であろうと、未発見の島というのはほとんど存在しなくなってしまった。

そりゃ、時として大規模な海底噴火でも起きれば、一夜の内に島が誕生することはあるが、現段階では99%の島は既に人類によって確認されている。

しかし、中には存在が噂されているだけで、未だに発見されていない島もあるという。

アイルランドのアラン諸島には、嵐の晩にだけ姿を見ることができる島があるとされている。

この島には数名の住人がおり、彼らは非常に友好的で、嵐の中命からがら逃げ延びてきた人々を温かく迎え入れるそうだ。

食事に事欠かないほど自然も豊富なようで、大きな鍋に沢山の野菜や肉を入れて煮込んだ料理を振舞ってくれるとのこと。

噂を知る人々は、この伝説の島をムリアスと名付けている。

これまで、船旅中に嵐に遭遇し、沈没寸前になった船舶の乗組員がムリアスを発見。寄港したという話は幾つも残されている。

そして多くの場合この島で島民の温かさに触れ、回復した船乗りたちは、晴天を見計らって帰路につくというのだが、その際に島を出てすぐに振り向いても、もうムリアスの全容は何処にも見当たらなくなっているという。

荒天の中でないと遭遇できないムリアス。果たしてそんな島が実在するというのだろうか。