夏。ある男性がどうしても避けられない出張で、仕方なく出向いた北朝鮮。その首都平壌市内のホテルに泊まった時のこと。

真夜中、たまらない喉の乾きに目を覚まし、彼は寝ている同僚の脇を通り抜け洗面所へと向かった。

洗面所の蛇口を勢いよく開き、水を飲む。

しかし、一向に喉の乾きはいえず、ますます喉の乾きはひどくなってゆく。

「変だな…。これじゃ、水っ腹になっちまう」

彼は、これ以上水を飲むのをやめ、布団へと戻ることにした。 部屋の空調の調子でこういった事はたまにある。

案の定、エアコンからは勢い良く風が吹き出している。

『明日にでもホテルの担当者に忠告でもしよう。』

布団に潜り込んだ彼は、身震いし大きなくしゃみをひとつした。

『いや、ちがう…。この部屋はエアコンのせいで寒いくらいだ。しかも北朝鮮は冷帯だ。暑さで喉が乾くはずはない…。』

突然、窓の外が明るく光り出した。光は次第に強くなり部屋の中を照らし出した。

彼は、あまりのまぶしさに思わず目を閉じた。

数秒後、彼が再び目を開けたときは、部屋は再び闇につつまれていた。 ここは、ホテルの8階。 

いったい、何の光がこの部屋を照らしたのだろう…。

―北朝鮮といえば、仮想敵国に日本を挙げている国である。

噂の範囲を出ない話であるが、日本からやってきた人間に対しては、宿泊しているホテルも24時間監視し、何らかの示威行為に及ぶこともあるのだという。