18世紀に存在したイギリスの秘密結社「地獄の火クラブ」は、悪魔主義を標榜したことで知られている。悪魔主義とは、悪魔を神のように信仰し、思想、時には人生そのもののより所にする考えかたで、主にキリスト教世界での、絶対神(GOD)の対照的な存在として、人々から忌み、恐れられている。

当然、このような悪魔主義を主張する秘密結社が存在すると公になってしまえば、弾圧の対象となる。この地獄の火クラブもその対象となった。

地獄の火クラブの主催者は、大富豪の貴族フランシス・ダッシュウッド。

若い頃から放蕩生活を送る彼は社交的な様々なクラブを主催していた。あるとき、友人からシトー会修道院の廃墟を譲り受けることになり、彼は秘密裏に改装して、豪華な殿堂を作り上げた。それが地獄の火クラブの開催場所となった。

地獄の火クラブが開催されると、イギリス中から、著名人、貴族、芸術家、政治家といった様々な人物がクラブの会員となった。特に有名なのがサンドウィッチ伯爵、ジョン・ウィルクスなどだ。

また、「修道女」と呼ばれた女性もいて、大半は売春婦だったが、中には上流階級のお嬢様までいたという。会員は彼女たちと日々、乱交を繰り返した。また、お遊び半分で悪魔崇拝の儀式を執りおこなうようなこともあり、いつしか周辺住民の人々から悪魔を崇拝しているという悪い噂が立つようになった。

悪い噂が立ち始めて、警察が動き出す事態となり、地獄の火クラブは十数年ほどで閉鎖されてしまう。しかし、その時に関連書類は全て焼き払われてしまい、本当のクラブの実態は掴めないようだ。

大物政治家のスキャンダルネタが世間に知られるのはまずかった上での処置だったのかもしれない。